50代の物忘れは劣化じゃない。「覚える」を捨てて「記録」する技術
はじめに:「あれ、何しに来たんだっけ?」が増えたら
リビングからキッチンへ移動した瞬間、「あれ、何を取りに来たんだっけ?」と立ち尽くす。
人の名前が喉まで出かかっているのに、どうしても出てこない。
「これって年齢のせい? それとも病気の前兆…?」
そんな不安がよぎるからこそ、つい自分を責めてしまっていないでしょうか。
もちろん、医療的な診断が必要なケースもありますが、ここでは「多くの人が感じる日常的な物忘れ」に話を絞ります。
ですが、50代になってからの物忘れは、「ボケてきた」わけではありません。
元プログラマーの視点から言わせてもらうと、それは「脳のスペックダウン(劣化)」ではなく、「仕様変更」の時期が来たサインです。
私は今、自分の記憶力を一切信用していません。
その代わり、すべての情報を「外部化(外付け)」することで、20代の頃よりもクリアに頭を使えています。
今日は、50代からの新しい脳の使い方についてお話しします。
脳の「メモリ」と「ストレージ」を理解する
結論:50代からは、脳に「覚えさせる」のをやめ、考えるための空き容量を確保する。
少しだけパソコンの話をさせてください。
コンピュータには、作業机である「メモリ(RAM)」と、倉庫である「ストレージ(HDD/SSD)」があります。
若い頃の私たちの脳は、この両方が新品で高性能でした。
だから、頭の中に膨大なデータを置きながら(記憶)、同時に複雑な計算(思考)ができました。
しかし50代になると、この「作業机(メモリ)」の広さが少し狭くなります。
これは老化というより、長年の経験や知識で机の上が埋まっている状態に近いかもしれません。
それなのに、昔と同じ感覚で「予定」や「買い物リスト」といった細かいデータを机の上に置こうとするとどうなるか。
当然、机が溢れてしまい、肝心の「思考」ができなくなります。
これが、「頭が回らない」「パッと判断できない」という感覚の正体です。
対策:「覚える努力」をやめて「記録」に逃がす
以前の私は、「メモを取るなんて老化を認めるようで嫌だ」と意地を張っていました。
しかし、スーパーで「6つ買う」と念じて出かけたのに、帰宅したら5つしかなくて愕然とする。そんなことが増え始めました。
決定的だったのは、サプリメントのお試し(500円)の支払いを忘れた事件です。
コンビニ払いの用紙を「あとで払おう」と放置していたら、ある日突然、「法的措置をとります」と書かれた督促状が届いたのです。
私は慌ててサポートセンターに電話し、「うっかりミスです、本当にすみません!」と平謝りして事なきを得ました。
たった500円のうっかりで、犯罪者扱いされる恐怖と、電話で謝る情けなさ。
その時、痛感しました。「50代になってから自分の記憶力を過信するのは、もうリスク管理として間違っている」と。
そこから私は、戦略をガラリと変えました。
対策はシンプルです。
「覚える努力」をきっぱりやめること。
脳の貴重なメモリを、「牛乳を買う」「Aさんにメールする」といった雑多な記憶に使ってはいけません。
それらはすべて、思いついた瞬間に「外部」へ吐き出します。
私は、以下のルールを徹底して「外部化」しています。
- 予定管理:Googleカレンダー(無料・通知あり。紙の手帳より確実)
- 思考のメモ:スマホとPCで同期されるクラウド型メモ(探す時間を減らす)
- 思考整理:対話形式で壁打ちできる生成AIツール(考える負荷を外注)
ポイントは、「自分の脳を信用しない」と決めることです。
「これくらい覚えられるだろう」という過信が、最大の敵です。
「第二の脳」を持つと、メンタルが安定する
記憶をすべてスマホやPC(外部)に預けてしまうと、脳内は驚くほど静かになります。
「何か忘れている気がする…」という漠然とした不安が消えるからです。
空っぽになった脳の作業机で、私たちは何をするべきか。
それは「考えること」と「味わうこと」です。
今日の夕飯をどう美味しくするか。
これからの人生をどう設計するか。
そうしたクリエイティブなことに脳のリソースを使うために、単純な記憶作業はすべて「機械(ツール)」に任せてしまいましょう。
それは手抜きではなく、50代というステージに合わせた「システム最適化」なのです。
▼ 50代の判断基準
「覚えないと不安なこと(予定・タスク)」は、すべて仕組みに逃がす。
脳のメモリは、「今日をどう楽しむか(思考)」のためだけに残しておく。
まずは今日ひとつ、「覚えようとしていること」をスマホに書き出してみてください。それだけで、頭は驚くほど軽くなります。
もし今、「覚えられない自分」に少しでも不安を感じているなら、それは衰えではなく、やり方を変えるタイミングが来ただけです。
まとめ:忘れることは、悪ではない
「また忘れちゃった」と自分を責めるのは、今日で終わりにしましょう。
忘れたのではなく、脳が「それは覚えておくほど重要なことじゃないよ」と判断しただけです。
大事なのは、忘れないように頑張ることではなく、「忘れても大丈夫な仕組み」を作ること。
スマホやAIという優秀な相棒がいれば、私たちの脳はまだまだ現役で走り続けられます。
このあと紹介する記事では、その「仕組み」を実際にどう作っているのかを具体的に書いています。
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